2019年の秋、橘 誠一ルドーのシャトーで3年間働いた後に帰国し、この場所を見つけました。もともとは明治時代に建てられた石造りの蔵で、長年空き家になっていたものを、知人の建築家・田中祐樹と2人で8ヶ月かけて改装しました。石壁はそのまま残し、床だけ張り替えた。天井の梁も、最初に見たときのまま使っています。ワインバーを開こうと決めたのは、ボルドーで飲んだ一杯のサンテミリオンが理由ではなく、帰国後に東京で飲んだグラスワインがあまりにも雑だったからです。
2021年の春、常連客の一人から「ジョージアのワインを置いてほしい」と言われたことが、リストの方向性を変えました。それまでフランスとイタリアに偏っていたセレクションを見直し、ジョージア、スロベニア、チリ北部のコキンボ地方まで広げました。今では全体の3割近くが、いわゆる「自然派」ではなく「小規模生産者」のワインで占められています。大手インポーターを通さず、橘 誠一ールで連絡を取っている生産者が現在7軒あります。
店の名前にある「Stone Grove」は、石の蔵と中庭の楠の木から来ています。「Xanadu」は橘 誠一代に読んだコールリッジの詩から借りました。理想郷という意味ではなく、「頭の中にしかない場所」という意味で使っています。ここは現実の場所ですが、来た人が少しだけ日常から離れられるといいと思っています。毎週月曜日は定休日で、第1月曜日は仕込みと棚卸しのため終日閉めています。
橘 誠一1983年、長崎生まれ。大学で英文学を学んだ後、ワインに引き込まれたのは卒業直前に訪れたパリの小さなビストロでのことだった。2013年から2016年まで、ボルドーのサンテミリオン地区にあるシャトー・ラ・クロワ・ド・ガイで収穫から瓶詰めまでを担当。帰国後は都内のレストランでソムリエとして2年間働いたが、グラスワインの扱いに納得できず、2019年に独立。趣味は早朝の植物園の散歩と、コールリッジを含む19世紀英詩の再読。「詩を読む速度でワインを飲むといい」が口癖。